15番札所:正仙寺(通称:吹上不動)

15番札所:正仙寺(通称:吹上不動)

ご詠歌

鴻の巣の 山にひびけり みほとけの 祈る心は 吹上不動

宗旨
真言宗豊山派
御本尊
不動明王
寺宝
両祖大師像 / 釈迦涅槃像 / 寄木造地蔵菩薩
住所
〒328-0125
栃木県栃木市吹上町1376

本堂に脈打つ武家社会の名残

明治の初期には、県庁が置かれていた伝統の町、栃木市。
その中心部をくねくねと流れる巴波川には、およそ八万六千尾の鯉が泳いでいる。川の両岸には、古い家並みが続き、一部は「蔵のある風景」としてよく知られている。

市街地を少し離れると、その北西部にあるのが吹上町。小高い山と田園の広がるのどかな地区である。そんな環境の中にあるのが正仙寺だ。

光明山正仙寺は、関東平野を一望に眺める足尾山地南端の鴻巣山中腹に、応永年間の初め(1394~1400)山城国醍醐山松橋無量寿院十一世俊海によって開山された。 立地している吹上の地は、日光山を開山した勝道上人(735~817)により「吹上」と命名されたと伝えられ、鴻巣山南端部の伊吹山は多くの平安の歌人たちに詠まれ、「伊吹のさしも草」は東国の歌枕として有名だ。

境内東の高台には、16世紀中期に皆川氏の出城である吹上城が、智積院中興第一世玄宥(1529~1605)の父膝附宗長によって築城された。

15番札所:正仙寺(通称:吹上不動)

江戸時代に入ると、松平定信の寛政改革により、下野国には真岡・藤岡・吹上の三ヶ所に陣屋が設置され、農民の復興にあたった。寛政五年(1793)、吹上の陣屋は吹上城跡に寺として位置づけられた。  その後、明治四年(1871)の廃藩置県により、吹上藩は吹上県となるが、まもなく廃県となった。墓地には有馬氏弘嫡男をはじめ多くの藩士たちの無縁墓碑が残っている。

このように、中世から近世にかけて、正仙寺は武士出入りの寺として栄えてきた。 境内に入ると、何となく、そのころの様子がおぼろげながら浮かんだくるから不思議だ。

正仙寺の付近には、太平山神社、星野遺跡、出流山満願寺などがある。
中でも、古代人の暮らしを垣間見ることのできる星野遺跡は必見。ちょっと足をのばしてみてはいかがだろう。 寺の近くに栃木インターチェンジがある。寺へは約3分。まさにクルマで訪ねるには格好の寺院だ。

蔵の街・栃木市が思いのほか広いことに気付かせてくれるのも正仙寺だ。