13番札所:泉龍寺(通称:乙女不動尊)

13番札所:泉龍寺(通称:乙女不動尊)

ご詠歌

水掛けて 祈りの水を ふらしつつ 病苦の民を 救ふ不動尊

宗旨
真言宗豊山派
御本尊
大聖不動明王
寺宝
不動明王 (本尊御分身像) / 山額 (南川和尚・淳元上人御筆)
住所
〒329-0214
栃木県小山市乙女1丁目25-8

遠望の華麗さに信仰の息吹を見る

館林から渡良瀬川沿いに行くと、栃木県にはいる。南部の都市・小山のいっ角が間々田。
駅西口からしばらく歩くと、美しい伽藍が遠方に見えてくる。これが泉龍寺。

山門をはいると、朱色が陽光に映えて美しい鐘楼門が、見る者の目を奪う。
その下をくぐり、朱色に包まれた橋を渡ると、不動堂が正面で私たち巡礼を出迎える。 中には、秘宝の大聖不動明王(五尺余りの立像)が納められており、25年に一度開扉されると聞く。

尊体は日光山中禅寺湖水より示現し、本尊に奉祀された。なお本尊の厨子の前には座像の不動明王が祀ってある。
不動堂を背にして左手には、不動池と呼ばれる水行場があり、その端に、水掛け乙女不動の像が美しくたたずむ。 旧跡文化の発祥地、不動塚。そこから湧く岩清水の霊泉で、この像を浄めれば、災難やいっさいの病苦が除去され、招福を享受できる。 つまり、水掛け乙女不動には功徳の霊験があるわけで、泉龍寺の不思議な“かお”といえよう。

13番札所:泉龍寺(通称:乙女不動尊)

泉龍寺は正慶二年(1333)に建立されたが、観応二年(1351)兵火のため灰じんに帰す。
永徳二年(1382)再度建立したもつかの間、小山下野守義政が反逆を起こした際、鎌倉管領佐兵衛督源氏満政が兵を率いて討伐にうって出た。  しかし、山野に放火した火が聖堂に引火し、それを焼失してしまう。
以来、数度におよぶ戦火に遭遇。それでも、不動明王の尊像は、厳然として戦火の中に出ていき、慈救の威相はますます輝きを増していった。 このため、火伏の不動ともいわれる。
時はくだって、慶長十一年(1606)御朱印地として寺領を賜り、さらに葵の御定紋を許され、現在に至る。

ところで、寺号の由来もなかなか興味深い。
あるとき、疫病に悩む庶民の苦しみを救うため本尊に祈ったところ、この地に清らかなる泉が湧き出てて、病がたちまちにして平癒したことから、泉龍と称するようになった、と伝えられる。

山門を出て、泉龍寺を遠目に眺めると、あたかも異次元の世界に迷い込んだよう。その姿は、まさに華麗にして荘厳。 その寺院を訪れた者は必ずや、大聖不動明王をぜひとも見てみたい、と思うはず。