36番札所:不動院(通称:安産子育不動尊)

36番札所:不動院(通称:安産子育不動尊)

ご詠歌

結びきて 願い成る寺板橋の 不動の功徳 たゆるひぞなき

宗旨
真言宗豊山派
御本尊
不動明王
寺宝
本尊不動明王並両童子 (国重文) / 本堂 (県指定) / 三重塔 (県指定) / 楼門 (県指定)
住所
〒300-2307
茨城県つくばみらい市板橋2370-1

豪壮な大伽藍に合掌するこころ

坂東より常総水海道を経て、穏やかな田園風景の中を板橋へと向かう。
長かった巡礼もやがて終るとなると安堵と愛惜が交錯するが、そんな我々の前にあらわれる不動院大伽藍は、ただただ深い悦びを与えてくれるのみである。

境内に入り、目前に仰ぐ楼門は豪壮にして華麗。
元禄年間(1688~1703)に建立されたというこの門には、阿吽の仁王像が安置されているが、これも又、丈余の素晴らしくも立派な出来映えといえる。
正面の本堂は、二重屋根組物・入母屋造りで、元文二年(1737)に不動院中興の祖といわれる高僧・霊雲阿闍梨が建立したものである。 力強さと優雅さとを併せ持つ大変稀な建造物ではなかろうか。

さらに不動院の格調を高めているのが、右手に端麗にそびえる三重塔。
安永元年(1772)の建立で、全高22メートル。軒下一面に華麗な極彩色の彫刻をほどこしたこの名塔は、そのまま江戸時代様の特色をよくあらわしているのだ。

36番札所:不動院(通称:安産子育不動尊)

不動院の開創は古く、大同年間・弘法大師と伝えられている。一刀三礼の古式に則って彫刻された不動明王立像がこの寺院の御本尊となっている。 藤原期定朝様式である此のお不動さんは、珍しくも穏和な表情と姿をしている。一般の不動明王が完全な憤怒形であるのと明らかに一線を画しているのだ。  板橋のお不動さんと呼ばれ親しまれ、安産や子育が特に霊験あらたかと信仰されるのも、この辺に理由があるのだろう。

降って天授六年(1380)名僧祥海阿闍梨が七堂伽藍を建立したが、嘉吉・天正の二度にわたる兵火で伽藍は灰じんと化した。 しかし、本尊不動明王がその都度火難を逃れたのは幸いであった。
文禄の世、先に述べた霊雲阿闍梨が、伽藍を営み中興の祖となり、不動院は隆昌をきわめることとなる。

本堂並びに楼門の棟には、よく見ると葵の紋によく似た紋がある。これは「八角三つ葵」と呼ばれる紋章で、不動院の格調を物語るものだ。 すなわち、水戸藩の連枝宍戸城主徳川大炊頭が息女の難産に困り、不動院に祈願したところその効しがあり、奉謝のために現本堂と葵の紋を授けたといわれているのだ。

この様にして、法燈連綿三十世・一千二百余年の歴史を持つ不動院。
朱塗りの堂塔がところせましと建ち並び、文化財の大伽藍の偉容は香煙絶えることがない。

北関東不動尊霊場第三十六番、結願の寺としてまさにふさわしい寺院である。