10番札所:医王寺(通称:黄金身代わり不動尊)
ご詠歌
妙なるや 法の蓮の 花咲て 心のそこも すめる小金井
宗旨 |
高野山真言宗 |
御本尊 |
薬師瑠璃光如来 |
寺宝 |
大日大聖不動明王(太田市教育委員会指定重要文化財) |
住所 |
〒370-0303 群馬県太田市新田小金井町982 |
おおらかさの中に垣間見る真実
昭和31年、三つの町村が合併して誕生した旧新田町(現、太田市新田)。
その北東部に医王寺はある。どこまでも広大な水田地帯に囲まれたまっすぐな道を行くと、そこが医王寺。
参道を歩くと、すぐ左に常夜燈がある。
さらに行くと、同じく左に、観音堂を兼ねた不動堂が、素朴そのものといった趣きをみせて建つ。
不動堂の中には、堂々たる不動明王像が収められている。
高さが1メートル70センチもあるこの像は、明和四年(1767)に造られたもので、現在は、太田市教育委員会指定の重要文化財となっている。 まさに医王寺のシンボルといえよう。
一方、観音堂には、半迦思惟型の如意輪観音が、大切そうに収納されている。
こころもち左上方に視線をやった表情は、いかにも何か思いにふけっているようで、見ている方も思わず、夢想の世界に引き込まれてしまう。
不動堂と観音堂をあとにすると、正面に本堂が見えてくる。装飾をまったくはぎとった外観。そこからくる親しみやすさ。この本堂には、そんな“気軽さ”がある。
その中には、大日大聖不動明王、脇仏不動明王、脇仏聖観音が収められ、まさに壮観。
歴史の方も、壮観さでは負けていない。
『醫王寺の秘仏』大日大聖不動明王は、万延元年(1860)に四国の西林寺からうつした不動像。
西林寺は聖武天皇の勅願によって、行基菩薩が天平十三年(741)に開創した古い寺で、近くにあった一の宮の別当寺であったらしい。
その後、大同二年(807)弘法大師が留錫し、寺を少し西南に移し再興した。
ところで医王寺には、三体不動尊いわれるものがある。
西林寺からうつした大日大聖不動明王の他に、寺伝によれば、正保二年(1645)、良伝法印より、同じく四国の泰山寺からうつした大日大聖不動明王がある。
(泰山寺は今治市の郊外にあって、弘仁六年(815)に創建された由緒ある寺)。
もう一体の大日大聖不動明王は、僧永雄が建立したもので、不動堂の中で威容を誇っている。
医王寺のある旧新田町は、とにかく水田が多い。秋の収穫期には、たくさんの稲が成熟し、豊かな穂をたらす、と聞く。 医王寺にも、成熟した“大人の味わい”とでもいえそうな雰囲気が感じられて、心地よい。